退去立会いは「損傷箇所の確認」をする場であり、退去費用の金額に同意する場ではありません。立会い当日にサインを求められ、その場で費用を確定しようとする管理会社もありますが、サインを急ぐ必要はありません。

事前の準備と当日の対応を知っておくことで、過剰請求に気づかないままサインするリスクを大きく下げられます。


退去立会いとは何をする場か

立会いの本来の目的

退去立会いは、管理会社(または貸主)が退去後の部屋の状態を確認し、損傷箇所を記録する場です。国交省ガイドラインでも、入居時・退去時にチェックリストを作成し、損耗の状況を双方が確認することを推奨しています。

立会いで確認・記録される主な内容:

  • 壁・天井・床の損傷・汚れの有無と状態
  • 設備(エアコン・給湯器等)の動作確認
  • 鍵の返却

立会い時のサインは「損傷確認の合意」であって「費用の合意」ではない

立会い後に署名を求められる書面は「現状確認書(チェックシート)」であることがほとんどです。これは損傷箇所を確認したという記録であり、退去費用の金額に同意したわけではありません。

費用の精算書は、立会い後に業者の見積もりを取って後日送付されるのが通常の流れです。立会い当日に退去費用の金額を確定してサインを求めるのは異例です。


立会い前の準備:持参すべき3点

① 入居時の写真・チェックシート

入居時に撮影した写真や、管理会社から受け取ったチェックシート(入居時の部屋の状態が記録されたもの)を持参します。「退去時に発見された損傷が入居前からあったもの」を証明する最大の武器です。

入居時の写真がない場合でも、部屋の様子を記録したSNS投稿・引越し業者の記録などが証拠になる場合があります。

② スマートフォン(写真・録音用)

立会い中に損傷箇所の写真を自分でも撮影しておきます。管理会社が「こんなに傷がある」と言っても、写真で記録することで後の交渉材料になります。

会話の録音も有効です。「この傷は借主負担です」という発言が後の交渉で問題になる場合、録音があれば根拠として使えます。

③ 賃貸借契約書

ハウスクリーニング特約・原状回復に関する特約の内容を確認するために必要です。立会い中に「特約があるから」と言われた場合、その場で内容を確認できます。


当日の注意点:4つのポイント

ポイント① 損傷の原因について発言に注意する

「ここは自分がやってしまいました」という発言は、その損傷を借主の過失と認める発言として扱われる場合があります。原因が不明な損傷については、その場での断言を避けてください。

確認したい場合は「確認します」と答えるにとどめ、後日書面で回答することが安全です。

ポイント② その場でのサインは急がない

立会い後に「今日中にサインしてください」「サインしないと退去が完了しません」と言われることがありますが、費用の精算書へのサインを当日行う法的義務はありません。

現状確認書(損傷箇所の記録)へのサインは問題ありませんが、費用の金額が記載された書面へのサインは、内容を精査してから行うことをおすすめします。

ポイント③ 「全部屋クリーニング必要」「全面張替え」の即断を保留する

立会い中に「この状態では全室クロスを張り替える必要があります」「フローリングが全面傷だらけです」と言われても、その場で同意する必要はありません。後日、精算書の内訳を確認してから判断します。

ポイント④ 鍵の返却は立会いと別でも問題ない

「鍵を返さないと退去が完了しない」という理由でサインを急かされることがありますが、鍵の返却と費用のサインは切り離して考えられます。鍵は返却しつつ、費用については後日精算書を確認してから対応することが可能です。

立会いなしで退去した場合・させられそうな場合のリスクと対処は退去立会いなしのトラブル対処法を参照してください。


立会い後:精算書が届いたら確認すること

立会い後に精算書が届いたら、以下の手順で確認します。

① 立会い時に確認した損傷箇所と一致しているか

立会い中に指摘されなかった損傷が精算書に追加されていないかを確認します。立会い時に撮影した写真と照合してください。

② 各項目の残存価値計算が適用されているか

借主負担上限額 = 修繕費用 × (1 − 経過年数 ÷ 耐用年数)

耐用年数(6年)を超えた設備の修繕費用が全額請求されていないかを確認します。

③ 通常損耗が借主負担に付け替えられていないか

日焼け・家具の設置跡・画びょう穴など、通常の生活による損耗が精算書に含まれていないかを確認します。

詳細な検証手順は「退去費用は交渉できる|減額の手順と交渉文例を解説」を参照してください。

精算書の項目ごとの具体的なチェック方法は退去精算書の項目チェックで詳しく解説しています。


よくある質問

Q:退去立会いは必ず参加しなければいけない?

法的な義務はありません。ただし、立会いに参加することで「入居前からあった損傷」を主張しやすくなります。参加できない場合は代理人を立てるか、管理会社に事情を説明して別日程を調整することを検討してください。

Q:立会い当日に費用の見積もりを出されたらどうすればいい?

その場では「後日書面で確認します」と伝えて持ち帰ることが最善です。見積書の写しをもらい、精算書を受け取ったら改めて内容を精査してください。

Q:立会いに管理会社の担当者しかいない場合は?

管理会社の担当者が立会いに来るのは通常の流れです。必要に応じて家族や知人に同席してもらうことができます。一人で対応に不安がある場合は同席者をお願いしてください。


まとめ

  • 退去立会いは「損傷の確認」の場であり、費用の金額に同意する場ではない
  • 立会い前に①入居時写真・②スマートフォン・③契約書を準備する
  • 損傷の原因についての発言は慎重に。その場での断言は避ける
  • 費用が記載された書面へのサインは当日行う必要はない。後日精算書を確認してから
  • 立会い後に精算書が届いたら、損傷箇所の一致・残存価値計算・通常損耗の確認の3点をチェック

見積書の内容が適正かどうか迷ったときは、退去費用診断ツールで確認してみてください。