3LDKの退去費用の適正相場は、入居年数3〜5年で9万〜16万円が目安です。20万円を超える請求には過剰な費用が含まれている可能性があります。

3LDKはファミリー向けの広い間取りのため、クロス・フローリングの面積が大きく請求総額が膨らみやすい傾向があります。子供部屋の傷やペット・タバコの損傷を理由に全室リフォーム費用を請求されるケースも見られます。各部屋・各設備ごとに年数控除を正しく適用することが適正額判断のカギです。

この記事でわかること:

  1. 3LDKの入居年数別の退去費用相場
  2. ファミリー物件特有の過剰請求パターン
  3. 部屋ごとの精算書検証手順

3LDKの退去費用相場:入居年数別

入居年数別の適正相場(目安)

入居年数適正相場(目安)過剰ラインの目安
1〜2年5万〜12万円18万円超は要確認
3〜5年9万〜16万円22万円超は要確認
6〜9年4万〜9万円14万円超は要確認
10年以上3万〜6万円10万円超は要確認

6年以上の入居ではクロス・エアコン等(耐用年数6年)の残存価値がほぼゼロになるため、長期入居ほど費用は下がります。「長く住んだファミリーだから高い費用を払うべき」という考えはガイドラインと逆です。

3LDKの費用内訳の目安(3〜5年入居・通常使用の場合)

費用項目適正額の目安備考
ハウスクリーニング60,000〜85,000円有効な特約がある場合のみ借主負担
クロス張替え(借主過失分)0〜25,000円残存価値計算後の借主負担分
クッションフロア・カーペット0〜20,000円故意・過失がある場合のみ
エアコンクリーニング(複数台)0〜45,000円特約がある場合のみ
その他補修0〜25,000円損傷箇所のみ

通常使用であれば、ハウスクリーニング特約が有効な場合でも合計は9〜16万円の範囲に収まることが多いです。

参考値を手元の請求書と照らし合わせたい場合は、退去費用診断ツールをご利用ください。


ファミリー物件特有の過剰請求パターン

パターン① 全室クロス全面張替えの全額請求

3LDKのクロス全面張替えは部屋数が多いため、費用が20〜35万円に上ることがあります。年数控除なしの全額請求は、入居年数によっては適正額の2〜6倍以上になる場合があります。

計算例:4年入居・全室クロス全面張替え20万円請求

残存価値割合 = (6年 − 4年) ÷ 6年 ≒ 33%
借主負担上限 = 200,000円 × 33% ≒ 66,000円
→ 約134,000円分が過剰請求の可能性

また、損傷のない部屋のクロスは借主負担になりません。「一部屋だけ子供が落書きした」場合でも、他の部屋の費用は含まれないのが原則です。

パターン② 子供部屋の損傷を理由にした全面リフォーム

子供の落書き・傷は借主の過失として請求されます。ただし適正な請求は「損傷箇所の補修費用」であり、それを理由に全室のリフォームを求めることはできません。

子供部屋クロスへの過失損傷(落書きなど)の例:

  • 正当な請求:該当部屋のクロス張替え × 残存価値割合
  • 不当な請求:全室張替え費用の全額

パターン③ 複数台のエアコン・設備全額請求

3LDKでは3〜4台のエアコンが設置されているケースもあります。

  • エアコンクリーニング:特約がない限り原則貸主負担
  • エアコン本体交換(6年超):残存価値1円のため材料費の借主負担はほぼゼロ

複数台のエアコンに関する費用が一括請求されている場合は、1台ごとの内訳と特約の有無を確認してください。

パターン④ タバコ・ペット損耗の全額請求(年数控除なし)

タバコのヤニ汚れ・ペット損傷は借主の特別損耗として負担義務があります。ただし耐用年数6年のクロスは、6年以上入居なら残存価値1円のため材料費の借主負担はほぼゼロです。入居年数に関わらず「ヤニ汚れだから全額」という請求は、年数控除を無視している可能性があります。

パターン⑤ グレードアップ費用の転嫁

長期居住後の退去を機に、管理会社が設備の全面更新(フローリング全面張替え・キッチン刷新など)を行い、その費用を借主に請求するケースがあります。「グレードアップ」に相当するリフォーム費用は借主負担の対象外です。


精算書の検証手順(3LDK版)

3LDKは部屋数が多いため、部屋ごとに分けて計算するのが重要です。

Step1 部屋ごとに残存価値を計算する

借主負担上限 = 修繕費用 × (1 − 経過年数 ÷ 耐用年数)

主な耐用年数:

設備耐用年数
クロス・クッションフロア・カーペット6年
エアコン・給湯器6年
便座・洗面台15年
フローリング(全面張替え)建物耐用年数(木造22年・RC47年)

Step2 各部屋の面積と単価を照合する

工事内容適正相場単価
クロス張替え800〜1,200円/㎡
クッションフロア張替え3,000〜5,000円/㎡
ハウスクリーニング(3LDK)60,000〜85,000円
エアコンクリーニング8,000〜15,000円/台

3LDKの3部屋分のクロスを合計すると100㎡超になるケースもあります。1㎡あたりの単価が相場を超えていないかを確認してください。

Step3 損傷のある部屋・箇所を特定する

全室に損傷がない場合、損傷のない部屋の費用は請求対象外です。精算書に「全室クロス一式」とあれば、実際に損傷があった部屋・面積の明示を求めてください。


高額請求されたときの対処法

  1. 精算書の内訳(部屋別・項目別)を書面で求める
  2. 年数控除を適用した適正額を計算して提示する
  3. 消費生活センター(188番)へ相談
  4. 少額訴訟または弁護士相談(差額が大きい場合)

2LDKの検証方法と共通する部分も多く、「退去費用 2LDKの相場|ファミリー向け物件の適正額と検証方法」も参考になります。退去費用全体の相場は「賃貸退去費用の相場まとめ|間取り・年数・特殊事情別に解説」もあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 3LDKの退去費用が30万円請求されました。妥当ですか?

A. 3〜5年入居なら相場(9〜16万円)の約2倍です。年数控除が適用されていない可能性があります。まず内訳の書面開示を求め、各部屋・各設備に残存価値計算を適用した適正額を算出してください。

Q. 子供が落書きした壁のクロス代は全額払う必要がありますか?

A. 落書きは借主の過失として請求対象になりますが、全額ではなく年数控除後の残存価値割合が上限です。たとえば4年入居なら残存価値33%が上限のため、張替え費用の33%程度が借主負担の目安です。他の部屋のクロス代は含まれません。

Q. 3LDKに10年住んだ場合、クロスや設備の退去費用は高くなりますか?

A. むしろ低くなります。クロス・エアコン等(耐用年数6年)の残存価値は6年で1円になるため、10年住んでいても材料費の借主負担はほぼゼロです。退去費用はハウスクリーニング特約の有無が主な決定要因となります。

Q. 3LDKのハウスクリーニングが10万円請求されました。正当ですか?

A. 3LDKのハウスクリーニング相場は60,000〜85,000円です。10万円は相場を超えており、契約書の特約に金額が明記されているかを確認してください。特約に金額の記載がない場合や著しく高い場合は、消費者契約法に基づく減額交渉の余地があります。

Q. 3LDKでフローリングの全面張替えを請求されました。どう対応すればいいですか?

A. フローリングの全面張替えは建物耐用年数(木造22年・RC造47年)で計算します。木造・5年入居なら残存価値は約77%が上限です。全面張替えが必要なほどの損傷がない場合、または損傷箇所が限定的な場合は部分補修で対応するよう求めることができます。


まとめ

  • 3LDK・3〜5年入居の適正相場は9〜16万円。22万円超は過剰請求を疑う
  • 全室クロスの年数控除なし全額請求は、適正額の数倍になる可能性がある
  • 子供部屋の傷は当該部屋のみが対象。他室への費用転嫁は不当
  • 6年以上入居ではクロス等の材料費の借主負担はほぼゼロ
  • ハウスクリーニング(60,000〜85,000円)は特約がある場合のみ借主負担
  • 高額請求には内訳開示→適正額計算→書面交渉→消費生活センター(188番)の順で対応する

参考資料

  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
  • 消費者契約法 第10条
  • 民法621条(賃借人の原状回復義務)