キッチンは退去費用のトラブルが発生しやすい部位のひとつです。油汚れ・換気扇の詰まり・コンロ周りの焦げなどは「通常の使用でもできるもの」と「手入れを怠った結果」の境界線が曖昧で、過剰請求の温床になりやすい場所です。

この記事ではキッチン周りの費用負担のルールと、適正な請求額の目安を解説します。


基本的な考え方

キッチンの油汚れ・換気扇の汚れは、料理をする以上、通常の使用で生じるものです。ただし、清掃を長期放置したことで固着・炭化・腐食が生じた場合は「善管注意義務違反」として借主負担になりえます。

国交省ガイドラインでは「台所の油汚れについては、使用後の手入れが悪く、通常の清掃では除去できない油汚れなどがついた場合は借主負担」と明記されています。


項目別の費用負担

換気扇

状態負担区分
通常の油汚れ・ホコリ(清掃で落ちる範囲)貸主負担
長期間清掃せず固着した油汚れ(清掃で落ちない)借主負担
換気扇本体の老朽化・部品劣化による交換貸主負担
フィルターの詰まりを放置したモーター焼損借主負担

コンロ周り・天板

状態負担区分
通常の使用による軽微な焦げ・油はね貸主負担
清掃を怠って固着した炭化汚れ・腐食借主負担
コンロ設備の経年劣化による交換貸主負担
強火の長時間使用による天板の焦げ・変色グレーゾーン(状況次第)

キッチン壁・タイル

状態負担区分
油はねによる通常の汚れ貸主負担
長期放置により壁材に浸透した油汚れ借主負担
タイルの目地の黒ずみ(通常使用の範囲)貸主負担
清掃不足によるタイルの腐食・変色借主負担

シンク・排水口

状態負担区分
通常の水垢・シンクの擦り傷貸主負担
清掃を怠った水垢の固着・サビ借主負担
排水詰まり(日常的な使用の範囲)貸主負担
異物を流した詰まり・放置による腐食借主負担

キッチンのクロス(壁紙)

キッチン周辺のクロスは油汚れ・熱・湿気の影響を受けやすく、変色・剥がれが生じやすい場所です。

状態負担区分
通常使用による変色・黄ばみ貸主負担
清掃不足による油汚れの浸透・変色借主負担
耐用年数(6年)を超えた場合の劣化貸主負担

キッチン清掃の適正単価

項目適正単価過剰ラインの目安
キッチン(換気扇含む)クリーニング15,000〜30,000円50,000円超は要確認
換気扇のみクリーニング8,000〜15,000円25,000円超は要確認
コンロ交換(設備更新)30,000〜80,000円借主負担か貸主負担かを確認
キッチンパネル交換20,000〜50,000円借主負担の根拠を確認

キッチン関連の請求額が上の単価目安の範囲内かどうか、退去費用診断ツール で手元の精算書の参考値を確認できます。


過剰請求が起きやすいパターン

換気扇の交換費用を全額請求される

換気扇が古くなったタイミングで、「借主の使用による汚損」として交換費用を全額請求されるケースがあります。経年劣化による部品交換は貸主負担です。清掃を怠った証拠がなければ、交換費用の借主負担は認められません。

コンロの交換費用を全額請求される

ガスコンロや IH クッキングヒーターの交換を「故意・過失による損傷」として全額請求されることがあります。通常の使用の範囲での消耗は貸主負担であり、借主負担とするには明確な過失の証拠が必要です。

「一式クリーニング費用」に高額な金額が含まれる

「キッチン清掃一式 8万円」のように、内訳のない高額請求が来ることがあります。換気扇・コンロ・シンク・壁の各項目に分けて内訳を要求し、単価の妥当性を確認してください。


精算書の確認手順

  1. 換気扇・コンロ・シンク・壁など部位ごとに請求を仕分ける
  2. 「清掃で対応できる汚れ」か「放置による固着・腐食」かを確認する
  3. 設備(換気扇・コンロ)の交換は経年劣化か故意・過失による損傷かを確認する
  4. 一式請求の場合は内訳の開示を要求する
  5. クリーニング費用の単価が相場内かを確認する

見積もり書全体の検証は「退去費用の見積もり検証ガイド完全版」、交渉方法は「退去費用は交渉できる|減額の手順と交渉文例を解説」を参照してください。


まとめ

  • 料理による通常の油汚れ・換気扇の汚れは貸主負担
  • 長期放置による固着・炭化・腐食は借主負担(善管注意義務違反)
  • 換気扇・コンロの経年劣化による交換は貸主負担
  • キッチンクリーニングの適正単価は15,000〜30,000円。50,000円超は過剰を疑う
  • 「一式」請求には必ず内訳の開示を求める

実際の請求書を手元に置いて参考値を確認したい場合は、退去費用診断ツール をご利用ください。