退去時に「ドアに傷がある」「建具が壊れている」として高額請求を受けるケースがあります。しかしドア・建具の費用負担はフローリングやクロスとは異なるルールが適用されるため、正確に理解しておくことが重要です。
この記事ではドア・建具の種類別の費用負担ルールと、適正単価の目安を解説します。
ドア・建具の耐用年数の考え方
国交省ガイドラインでは、ドアや建具(室内ドア・クローゼット扉・ふすまなど)は建物の構成部分とみなされます。そのため、クロス(6年)や家電(6年)とは異なり、建物の法定耐用年数が適用されます。
| 建物構造 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 木造・木骨モルタル | 22年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材3mm以下) | 19年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材3〜4mm) | 27年 |
| 重量鉄骨造 | 34年 |
| RC造・SRC造 | 47年 |
たとえば木造アパートに5年住んだ場合、ドアの残存価値割合は次のとおりです。
残存価値割合 = 1 − (5 ÷ 22) ≒ 0.77(77%)
修繕費用が5万円なら、借主負担の上限は約3万8,500円です。
ただし、**破損個所のみの部分的な補修(塗装・金具交換など)の場合は、建物耐用年数ではなく実費(補修費の実額)**が請求されるケースもあります。
耐用年数の計算方法の詳細は「退去費用の経年劣化・耐用年数の計算方法」を参照してください。
部位別の費用負担
室内ドア(洋室・リビングのドア)
貸主負担(払わなくていい)
- 通常使用による塗装の色あせ・小傷
- 建付けの狂い(経年による木材の反り・膨張)
- ドア枠の変色・劣化
借主負担(払う必要がある)
- 引越しや家具移動時につけた大きな傷・へこみ
- ドアに開けた穴(ポスターを貼るための釘穴以上)
- 故意・過失による建付け不良(強引な開閉による破損)
適正単価
| 修繕内容 | 適正単価 | 過剰ラインの目安 |
|---|---|---|
| 室内ドア塗装補修(部分) | 10,000〜25,000円 | 50,000円超は要確認 |
| 室内ドア交換(ドア本体) | 40,000〜100,000円 | 借主負担の根拠を確認 |
| ドアノブ・鍵交換 | 5,000〜20,000円 | 30,000円超は要確認 |
クローゼット扉・押し入れの引き戸
貸主負担(払わなくていい)
- 通常使用による変色・擦り傷
- レール・戸車の経年劣化による開閉不良
- 塗装の色あせ
借主負担(払う必要がある)
- 扉の破損・割れ(物をぶつけるなど故意・過失)
- レールの変形(無理な扱いによるもの)
- 扉への落書き・シール跡(除去困難な汚損)
適正単価
| 修繕内容 | 適正単価 | 過剰ラインの目安 |
|---|---|---|
| 引き戸・折れ戸の調整 | 5,000〜15,000円 | 30,000円超は要確認 |
| クローゼット扉交換 | 20,000〜60,000円 | 借主負担の根拠を確認 |
ふすま・障子
ふすまと障子は国交省ガイドラインで消耗品的な扱いとされており、建物耐用年数ではなく独自のルールが適用されます。
| 部位 | 耐用年数の考え方 |
|---|---|
| ふすま紙 | 消耗品。破れ・落書きなど借主の過失は実費負担 |
| 障子紙 | 同上 |
| ふすまの骨組み・框 | 建物耐用年数を適用 |
注意点:ふすまや障子の張替え費用は、通常使用による変色・日焼けは貸主負担です。破れや落書きがある場合のみ借主負担になります。
適正単価
| 修繕内容 | 適正単価 | 過剰ラインの目安 |
|---|---|---|
| ふすま張替え(1枚) | 3,500〜7,000円 | 15,000円/枚超は要確認 |
| 障子張替え(1枚) | 2,000〜4,000円 | 8,000円/枚超は要確認 |
網戸
網戸の張替えは消耗品的な扱いで、経年劣化による破れは貸主負担が原則です。
貸主負担(払わなくていい)
- 経年劣化による網の破れ・変色
借主負担(払う必要がある)
- 故意・過失による破損(タバコの焦げ穴、ペットによる引っかき傷など)
適正単価
| 修繕内容 | 適正単価 | 過剰ラインの目安 |
|---|---|---|
| 網戸張替え(1枚) | 3,000〜8,000円 | 15,000円/枚超は要確認 |
玄関ドア
玄関ドアは建物の共用部分に近い扱いであり、通常は借主負担の対象になりません。
貸主負担(ほぼすべて)
- 経年劣化による色あせ・塗装剥がれ
- ドアクローザーの経年劣化
- 通常使用による傷・汚れ
借主負担(稀なケース)
- 衝突・強衝撃による大きな変形・穴
- 故意による破損
過剰請求が起きやすいパターン
ドア全交換を一式で請求される
小さな傷・汚れに対して、ドア本体の全交換費用を請求されるケースがあります。補修で対応できる損傷に対して全交換を求めることは過剰請求の可能性があります。補修で対応可能かどうかを確認し、全交換が必要な根拠を求めてください。
建物耐用年数が反映されていない
ドア・建具は建物の耐用年数が適用されるため、入居年数が長いほど借主負担割合は下がります。木造10年入居なら残存価値は約55%です。耐用年数が考慮されていない全額請求は減額の根拠になります。
ふすま・障子の「一式」張替え
損傷のないふすま・障子まで「一式張替え」として請求されるケースがあります。損傷がある枚数分のみが請求対象です。
ドア・建具の請求が過剰なパターンに当てはまっていないか、退去費用診断ツール で手元の精算書の参考値を確認できます。
精算書の確認手順
- 建具の種類(室内ドア/クローゼット/ふすま/網戸)を確認する
- 損傷の原因が「通常損耗・経年劣化」か「故意・過失」かを判断する
- 借主負担と判定した場合、建物の耐用年数に基づいた残存価値割合を計算する
- 補修か全交換かの妥当性を確認する
- 単価が相場内かを確認する
見積もり書全体の検証手順は「退去費用の見積もり検証ガイド完全版」を参照してください。
まとめ
- ドア・建具の耐用年数は建物の法定耐用年数(木造22年・RC造47年など)が適用される
- 通常使用による変色・小傷・建付け不良は貸主負担
- 故意・過失による傷・穴・破損は借主負担(残存価値計算あり)
- ふすま・障子・網戸の紙・網は消耗品扱いで経年劣化は貸主負担
- 補修で対応できる損傷に対しての全交換請求は過剰の可能性がある
実際の請求書を手元に置いて参考値を確認したい場合は、退去費用診断ツール をご利用ください。