退去時の畳費用は、**畳表(表面のい草部分)と畳床(内部の芯材)で扱いが異なります。**通常の使用による日焼け・摩耗は貸主負担であり、借主が費用を払う必要はありません。

「和室があったから畳代を請求された」という場合、その費用が正当かどうかを確認することが重要です。


畳の原状回復:基本的な負担原則

畳表(表面)は消耗品扱い:経過年数の考慮なし

国交省ガイドラインでは、畳表(表面のい草)は「消耗品」として扱われます。消耗品は経過年数による減価を考慮しないため、残存価値の計算式は適用されません。

ただし、消耗品扱いであることは「何でも借主負担」という意味ではありません。通常の生活による日焼け・摩耗は貸主負担です。日常的な使用の結果として劣化した畳表の交換費用は、借主が負担する必要はありません。

畳床(芯材)は耐用年数6年

畳の芯材(畳床)の耐用年数は6年です。6年を超えると残存価値は1円とみなされます。畳床の損傷が借主の過失による場合でも、耐用年数計算が適用されます。


借主負担・貸主負担の線引き

貸主負担(通常損耗・経年劣化)

以下の状態の畳は、通常の生活による劣化として貸主が修繕費用を負担します。

  • 日焼けによる色あせ・変色
  • 長年の使用による摩耗・毛羽立ち
  • 家具の設置による凹み(通常程度)
  • 経年による変色・臭い

借主負担(故意・過失による損傷)

以下の場合は、借主の過失による損傷として費用を負担する必要があります。

  • 飲み物・液体をこぼして放置したシミ・腐食
  • 灯油をこぼして染み込んだシミ
  • 引っ越し作業で家具を引きずってできた傷
  • ペットの尿・爪とぎによる損傷
  • タバコの焦げ跡・ヤニ汚れ

畳の耐用年数の扱いと残存価値の計算方法は退去費用の経年劣化・耐用年数の計算方法で解説しています。


畳の修繕費用の相場

工事の種類と費用目安

工事の種類内容費用目安(1枚あたり)
裏返し畳表を裏返して再利用3,000〜5,000円
表替え畳表のみを新しく張り替え4,000〜8,000円
新調畳全体を丸ごと交換8,000〜15,000円

通常、借主の過失による一部損傷であれば「表替え」か「裏返し」で対応できます。軽微な損傷に「新調(畳全体交換)」を請求するのは過剰です。

借主負担になる場合のシミュレーション

1枚の畳に飲み物をこぼしたシミがある場合(入居3年・表替え6,000円/枚):

畳表は消耗品扱いのため経過年数考慮なし。ただし損傷は1枚のみ。

借主負担 = 6,000円(1枚の表替え費用)

「シミがあるから全室の畳を新調」は過剰です。損傷箇所の最小単位(1枚)での修繕が原則です。

他の部位・間取り別の相場は退去費用の相場まとめで確認できます。


畳費用の過剰請求パターン

パターン① 経年劣化を理由に全室新調を請求

通常使用による変色・摩耗を「汚損がひどい」として全室新調を請求するケースがあります。日常使用による劣化は貸主負担であり、「古くなったから新調」は借主が負担する必要はありません。

パターン② 消耗品なのに残存価値計算を行わず高額請求

畳表は消耗品扱いのため残存価値計算は不要ですが、逆に「消耗品だから何でも借主負担」という誤解を利用して高額請求するケースがあります。消耗品であっても、通常損耗は貸主負担です。

パターン③ 1枚の損傷に全室分の費用を請求

「部屋全体の畳が同じ年数で使用されているので、1枚だけ替えると見た目が不均一になる」として全室分を請求するケースがあります。デザイン統一のための全室費用は借主負担の範囲外です。


和室・畳のある物件の特約に注意

和室がある物件では「畳の表替えは借主負担」という特約が設定されているケースがあります。特約が有効であるためには以下の3要件が必要です(最高裁平成17年12月16日判決の趣旨)。

  1. 金額または負担内容の明示
  2. 通常損耗を超えた負担であることの認識
  3. 署名による合意

要件を満たさない特約は無効になる可能性があります。契約書の内容を確認してください。

詳しくは「ハウスクリーニング特約は無効になる?有効条件を判例で検証」も参照してください。


まとめ

  • 畳表は消耗品扱い(経過年数考慮なし)。通常の日焼け・摩耗は貸主負担
  • 畳床の耐用年数は6年。損傷時は残存価値計算を適用
  • 借主負担になるのは飲み物のシミ・灯油汚れ・ペット損傷・タバコ焦げ跡等の故意・過失分のみ
  • 修繕単位は損傷箇所の最小単位(1枚)。全室新調請求は過剰
  • 「畳の表替えは借主負担」特約は有効要件の確認が必要

見積書の内容が適正かどうか迷ったときは、退去費用診断ツールで確認してみてください。